大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和61年(ネ)3868号 判決

控訴人(原告) X1

控訴人(原告) X2

右両名訴訟代理人弁護士 高澤正治

被控訴人(被告) 住友生命保険相互会社

右代表者代表取締役 A

右訴訟代理人弁護士 川木一正

松村和宜

長野元貞

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実

控訴人ら代理人は「原判決を取り消す。被控訴人は控訴人らに対し各金二二五〇万円及びこれに対する昭和六〇年六月一日以降完済に至るまで年六分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決及び仮執行の宣言を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の主張及び証拠の関係は、控訴人ら代理人において「保険契約者甲山B夫が「甲山C子」を保険金受取人に指定したのは、乙川D子が短大卒業と同時にB夫と婚姻し「甲山」姓になることを前提としてしたものであるから、乙川が短大卒業後東京の資生堂に就職し埼玉県蕨市に住居を移しB夫と婚姻しなかった以上、保険事故発生時において右の「甲山C子」という人物は存在しないことになるから、本件保険金の受取人はB夫の相続人である控訴人らである。」と述べ、原審における乙第三号証に対する認否を「官署作成部分の成立を認めるが、その余の部分の成立は不知」に改め、被控訴代理人において「控訴人らの前記主張を争う。」と述べたほか、原判決摘示事実と同一であるから、これを引用する。

理由

当裁判所も、控訴人らの請求は理由がないから失当として棄却すべきものと判断する。その理由は、次の説示を付加するほか、原判決の説示理由と同一であるから、これを引用する。

本件保険金の指定受取人「甲山C子」は、B夫が被控訴人と保険契約を締結した当時同人と婚約中であった実在の乙川D子(成立に争いのない甲第四号証の二によると、同人の本籍地は〈以下省略〉、生年月日は昭和三七年○月○日であることが認められる。)を指すものであることは、引用に係る原判決理由中の認定事実より明らかであり、右以上に乙川がB夫と婚姻し「甲山」の姓を称する限りにおいて保険金受取人とする旨の指定をしたものと解し得る特段の表示がされたことは証拠上認められないから、たとえ乙川が保険事故発生時にB夫と婚姻し「甲山C子」という氏名になっていなくても、乙川が保険金受取人であることには変りはないものというべきであって、保険金受取人が不存在であるとは到底解し得ないところである。

よって原判決は相当であるから、民事訴訟法第三八四条、第九五条、第八九条及び第九三条第一項本文に従い、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 賀集唱 裁判官 安國種彦 伊藤剛)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例